良いうんちのドナー(提供者)はなかなか見つからないため、伝説の一角獣に例えて「ユニコーン」と呼ばれることもある。
ヒトの腸内細菌の集団「マイクロバイオーム」が健康に与える影響は、従来の想像をはるかに超えるものであることが、最新の科学で明らかにされている。
マイクロバイオーム内の遺伝物質の集合体は、数え切れないほどの機能を果たしており、私たちの気分や免疫、心身の健康に影響を及ぼしているのだ。また、腸内細菌の多様性は、うつ病からがん治療の効果まであらゆる分野に関係している。
そこでマイクロバイオームの健康を取り戻すために注目されているのが糞便移植だ。
「秘伝の液体」につけて培養
バイオ企業のバイオームバンクは、オーストラリアのアデレード郊外に拠点を構える。最高医療責任者(CMO)のサム・コステロと最高経営責任者(CEO)のトーマス・ミッチェルが首から下げているストラップは細菌のイラスト入り。
同社の至上命題は、スーパーうんちのドナーとなるユニコーンを探すこと。社内には「糞便バンク」があり、この場所でいわば「デザイナーズうんち」の移植が行われる。
うんちの寄付を受け付ける特別ドナー室(つまりトイレ)もある。研究室には嫌気性菌培養装置を備えており、ここでドナーの菌種を「秘伝の液体」に入れて培養し、菌株を分離する。この菌株は分類され、将来的な使用のためにラベルをつけて保管される。
「腸の健康」をうたう製品に注意!
マイクロバイオーム研究における最も刺激的な分野のひとつとして、がん研究がある。腸内細菌の多様性が高い人ほど治療、特に免疫療法に対する反応性が高いことがデータで示されている。
ただ、研究の多くがまだ初期段階にあるにもかかわらず、儲けを狙う産業界は「腸の健康」を促進するといった曖昧な効能をうたって製品を販売するなど、あまりにも性急に便乗している。
豪ニューサウスウェールズ大学のマイクロバイオーム研究センターは、マイクロバイオームが、がんや女性・子供の健康、感染症、免疫、炎症、救命医療、メンタルヘルスや神経科学に及ぼす影響について研究している。
センター長のエマド・エルオマール教授によると、クロストリジウム・ディフィシル腸炎(敗血症を引き起こし死に至ることもある)の治療においては、マイクロバイオームの多様性を高めること(つまり糞便移植)の有効性が先端研究で示されているが、他の疾患については何がどのように有効なのか、今も解明中だという。
こうしたヒトに生息する微生物の遺伝子数は、ヒト遺伝子の数を圧倒的に上回ると同教授は言う。
「非常に期待の持てる分野ではありますが、全人類の利益を最大化するためには、まだやるべきことがあります」
エルオマールはまた、ウェルネス産業は「腸の健康」と軽はずみに言う傾向があるとしている。
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