「海外大学卒業」というブランドが、中国国内での就職で意味をなさなくなってきている。
教育省の統計によると、2019年に留学した中国人の総数は70万3500人だった。2019年から2020年度には、イギリスだけで新たに10万人以上の学生が送り出され、前年の20%増を記録していたことが、イギリスに拠点を置く高等教育統計庁の調べでわかっている。
比較的裕福な家柄の学生にとって、イギリスは相変わらず人気の留学先だ。しかし、欧米大学の卒業生の方がソーシャルスキルや語学力を身に付けているので、中国の就職市場で需要が高い──そういう考えは、いまの就職活動中の若者たちの頭にはないようだ。
中国国内では海外大学の名前は知られていない
2018年にイギリスの有名大学、ブリストル大学で社会学の学位を取得したリー・チェン・ヘイ・ユーはこう話す。
「私たちが国内大学の出身者よりも有利な立場にあるとは思いません。地方や中小企業に応募する場合はとくにそうです。そうした企業の採用部門は、985や211プロジェクトに選ばれたような中国の大学の方に親しみを持っています」
985と211プロジェクトとは、それぞれ1998年と1990年に中央政府が立ち上げた政策で、全国の大学が世界レベルの教育機関を目指すための支援を目的としている。含まれているのは、名門として名高い清華大学、北京大学、復旦大学などだ。
実際、中国の大学は雇用市場で評価され始めている。
「エンプロイアビリティ・ランキング2020」によると、 中国は過去10年間、大学院卒業後の雇用可能性で世界第5位につけていた。
たとえばイギリスは、2010年から6ランク上昇した中国より、たった1ランク勝っているだけである。さらにトップ100にランクインした中国の教育機関は、すべて過去の順位を維持または上昇させている。
地元の人脈も大切
求職中の若者は、学位をどこで取得したのかと同じくらい、「地元の人脈」が物を言うことにも気づき始めている。
コーが言うには、ある種の職業に就くには国内での強力なネットワークが必要であり、雇用主は何年も国を離れていた若者より、地元のエリート大学の卒業生を好むという。
教育省によると、1978年から2019年の間に650万人以上の中国人が海外留学したが、90%近くが卒業後に帰国している。
昨年はパンデミックによる歴史的な経済収縮の影響で、新卒者は厳しい就職競争に直面したが、雇用市場には回復の兆しが見えている。
国家統計局によると、中国は今年1月から10月までに1133万人の雇用を創出したが、調査対象の失業率は9月以来4.9%となり、2018年9月以来の低水準となった。
搾取される中国人留学生
海外の学位が競争力を失う一方で、過去の留学生たちがシェアした不快な経験など、個人的な理由で中国の大学院を選択する学生もいる。
「残念ながら、留学生は常に“金のなる木”のように扱われます。欧米の大学は、留学生が支払う学費を収入源として頼りにしていますが、それに見合う価値のサービスを提供していない大学もあります」
ウーは、両親のそばで暮らし、地元の人脈を生かしたかったと語る。
「私はそれほど積極的でも外向的でもないので、イギリスに残るメリットをあまり感じません。インターンシップによって、すでに中国での職業ネットワークを築いているので、なおさらそう思います」
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