1月18日、マイクロソフトは、アメリカトップのゲームソフト開発・販売のアクティビジョン・ブリザードを690億ドル規模で買収すると発表し、話題を呼んだ。
同社をはじめとするテクノロジー大手は、メタバースなど新技術への投資と開発を急速に進めている。なかでもフェイスブックを運営するメタ社は、さらにメタバースの開発に集中的
に注力し、今後10年間で年間100億ドルを費やすと明言している。
英誌「エコノミスト」によると、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を持つ企業の近年の13件の買収のうち、8社がメタ社によるものだという。さらに2019年以降に同社が申請した特許の半分以上は、ARやVRに関するものだった。
ユーザーの生体情報をメタバースに直接反映
そして、2022年に入ってから米国特許商標庁が認定したメタ社の特許のうち、数十の特許について、「フィナンシャル・タイムズ」が分析したところ、やはりメタバース関連のものが多かったという。
特にウェアラブルのデバイスからユーザーの視線や顔の動きなどの生体情報を取得し、それを用いてメタバース上の体験を変化させるための技術が多く見られた。
というのは、人の目や表情、身体の動きなど、ユーザーの無意識の反応という膨大な情報をメタは取得することになるものの、それらのデータを提供するユーザーの充分な理解なしに、ターゲット広告に活用されることが考えられるからだ。
たとえば、人間の視線の方向や瞳孔の動きには、その人の興味や感情に関する情報が暗黙のうちに含まれているという研究結果がある。メタ社は、それらの動きなどを収集し、活用する技術をすでに有している。
これらのデータを用いれば、現在のFacebook上のパーソナライズ広告以上にターゲット化された広告をメタバースに出せるだろう。
取得される膨大な生体情報で金儲け
また、「メタ社は、肌の毛穴、髪の毛、動きのすべてを再現することを目標としています」と、法制度改革活動家のノエル・マーティンは述べる。彼女は西オーストラリア大学でメタ社による人に対するモニタリングの野望を1年以上研究してきた。
このような本当に膨大な量の情報を取得しようとしている同社が、データの使用に関して安全性を確保しようとしているのか疑わしいと、エピック・ゲーム社のユーザーエクスペリエンス部門の元ディレクターのセリア・ホデントも懸念を示す。
なお、今回取得された特許には、たとえば胴体の周りに身につけるウェアラブル磁気センサーシステムから、体の動きを追跡する技術などがある。この技術によって、デバイスを装着したユーザーが、バーチャル空間の中で剣と鎧を身につけた兵士として登場するなど、より多くのリアルな体験が可能になる。
新たな技術によって、さまざまな体験の可能性は広がりつつある。しかし、これは「安全性よりも利益を優先」すると批判される同社に対し、無意識の行動までをも含む詳細の膨大なデータを提供するということでもある。
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