原発「処理水の海洋放出」─日本が安全を強調するほど失敗する理由【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.36】
日本政府が東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海洋放出する計画だと発表してから、国内に留まらず近隣諸国で反対の声が上がっている。
なぜ放出は問題ないという日本の見解は理解してもらえないのか。その点について、オックスフォード大学の健康・環境学の専門家が、香港メディアで論じている。
日本政府は4月13日、爆発事故を起こした福島第一原子力発電所で収集された処理水(約125万トン)を海洋放出する方針だと発表した。
東京電力は10年間、落下した核燃料が連鎖反応を引き起こさないよう、水をかけ続けて冷却するという、厄介で困難で果てしない作業に従事してきた。
メルトダウンによって危険なウラン燃料が圧力容器を破って下に溶け落ちてデブリになっている。この落下したウランを冷却する唯一の方法は、原発内で最も危険なエリアに海水を循環させて水浸しにすることだ。
放射性物質を含む地下水や廃水は現地に貯蔵され、人間や環境に接触しないようにされている。
事故以来、汚染水で満たされた巨大な貯水槽が福島第一原発の周りに続々と出現している。いまやその数は1000を超え、350ヘクタールの敷地にどんどん余裕がなくなっていっている。
「トリチウム君」と「プルト君」
日本の復興庁が「トリチウム君」というキャラでトリチウムを描写した動画を公開したことは印象的だった。無害に見える魚のような生き物が頬を赤くして、トリチウムの放出は安全と語るのだ。
観察者たちにとって、これは原子力産業が1990年代に展開した悪名高き「プルト君」の動員を思い起こさせるものだった。
このいたずら好きな漫画キャラは、世界で最も危険な物質ともされるプルトニウムを飲み、その無害性を示したのだった。
なぜこのタイミングで発表されたのか?
近隣諸国が処理水の放出計画に声高に反対している一方で、日本国内でも抵抗があることが多くを物語っている。日本人の多数がこの計画に反対している。
この10年、漁業従事者たちは、福島原発から流出する放射性プルームから充分に距離をとり、市場に水揚げする自分たちの海産物は安全だと示すことに苦労しながらも成功してきた。
こうした努力がすべて、まもなく水泡に帰すかもしれない。
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