新曲が売れないのはなぜ? 米国の音楽市場の70%を占めるのは「古い曲」だった【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.217】

現在、「アメリカの音楽市場の70%を古い曲が占めている」と、音楽・カルチャーライターのテッド・ジョイアが米誌「アトランティック」に寄稿している。


すべての音楽ストリーミングにおいて、最も人気のある200曲のうち、新曲(過去18ヶ月以内にリリースされた曲)が占める割合は、なんと5%未満。少なくとも3年前は「10%はあった」と、同氏は述べている。


一体なぜ、新曲は売れなくなってしまったのか。

パンデミックの影響だとの見方もある。クラブが閉鎖してライブやコンサートができなかったことや、社会にノスタルジックなムードが広がったこと、これらがリスナーを古い曲へと向かわせたとみる人もいるが、「では、社会が通常運転に戻れば新曲が売れるようになるかというと、そうは思えない」と、同氏は述べる。


その一因には、「何十年も昔の古い体制を引きずったままの」ラジオ局の好みも関係しているようだ。多くの局は「新曲を流すことに消極的」。馴染みのない新曲よりも「過去のヒット曲を好んで流す傾向が強い」。

また、別の要因には、著作権訴訟のリスクを挙げている。


「曲が似ている」ことを巡って2015年に起きた大きな著作権訴訟以来、訴えられるリスクは「かつてないほど高くなっている」と書く。


せっかく巨額を投資して、さまざまな障壁を乗り越えて新曲をヒットさせたとしても、「盗作だ」と訴えられて訴訟に負けてしまえば、多額の賠償金を支払わなければならない。


加えて、テクノロジーの進化により、すでに亡くなっている伝説のミュージシャンがホログラムにより仮想形式で蘇るケースも出てきている。つまり、これからの時代、新人が競わなければならないのは「往年のスターだけでなく、死者も」である。


ならばと、リスクが低く、それでいて収益の見込みが高い、古い楽曲(の権利を取得すること)に投資している──、それが今の音楽業界で起こっていることだという。


著名なミュージシャンらは、ストリーミング時代の到来で音楽の価値が高まるにつれ、自身の音源の権利や著作権を売却することで、自らのレガシーを固めようとしていると、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は述べている。そして、投資家やレコード会社はそれらを高値で入札するのに躍起になっていると書く。

ストリーミング時代のミュージシャンの存在の“希薄化”

このように新曲は音楽業界の制度や仕組みによって疎外され、レコード会社が新人の発掘と育成に消極的であるため、新興のミュージシャンらは露出を得るために、“別の道”を模索せざるを得なくなっている。


自作のトラックをストリーミングで配信したり、広告やテレビ番組に曲を提供したり、といったことがそれに該当するが、「どれもいくらかのロイヤルティ収入を生み出しはしても、知名度の構築には繋がりにくい」。なぜなら、ストリーミングサービスで新曲のプレイリストを日常的に聴いている人も、その曲が誰の曲かまでは把握していないことが多々あるからだ。


ストリーミング時代では、音楽は人々の生活のさまざまな場面に、よりシームレスに溶け込むようになったが その結果、ミュージシャンの存在の“希薄化”を招いてしまっている。それは新興のアーティストであれば尚更だ。


「ヒットトラックと呼ばれる新曲ももちろんある。だが、それらも(昔のように)文化的な影響をほとんど生み出さずに消えていってしまっている」


しかし、彼は「前衛的な新しい音楽は、いつの時代も思いがけない場所から生まれてくるものだ」と、寄稿文の最後ではポジティブな見解をみせている。


ヒップホップ然り、次の時代の新しい音楽は、往々にしてレコード会社からではなく、街の片隅から生まれてきた。真の音楽の革命は「トップダウンではなく、ボトムアップで起こるものだ」と述べ、ストリートや昨今であればネット上から生まれてくる可能性もまだあると、示唆している。

イベント参加はこちらから。 https://peatix.com/group/7228383


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