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中国「無精子症」患者は700万人! AIによる精子提供マッチングシステムで“命の選別”が始まる⁉︎【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.197】

最先端の生殖医療を進める公立病院・広東省生殖医院にこのほど、25人の専任医師・研究員がAIを駆使して無精子症の研究・治療に取り組む「広東省無精子症診療センター」をオープンさせた。


北京大学第三医院の姜輝強・泌尿外科主任によると、ここ10年、中国では無精子症患者が増えており、男性総人口の1%(約700万人)、不妊症男性(約4000万人)の15%(約600万人)が無精子症といわれる。


センターは、悩める無精子症患者と不妊夫婦の救済窓口となっている。

無精子症とは不妊の原因のひとつで、睾丸の精巣に精子がないのではなく、精液中に精子がない状態を指す。


ほとんどが先天性だが、おたふく風邪、化学療法などによって後天的に無精子症が引き起こされる場合もある。

広東省生殖医院では、顕微鏡手術によって無精子症患者の精巣から健康な精子を摘出し、彼らが父親になるのを支援してきた。精巣から精子を摘出でき、受精に結びつく割合は、患者の約6割という。


もっとも、このような無精子症の治療は、中国の多くの病院で実施されている。だが、健康な精子が患者から摘出できなかった場合、医師は夫婦に、養子を迎えるか精子バンクから精子を購入するよう提案するが、多くの夫婦は精子バンクの利用をためらう。


購入した精子のドナー情報が正確かどうか疑わしいし、購入した精子から無事に赤ちゃんが産まれたとしても、赤ちゃんと父親の外見的特徴がかけ離れているリスクや父母と血液型が一致しないリスクも避けられないからだ。


8万の精子のデータからセレクト

「広東省無精子症診療センター」がユニークなのは、AIのマッチングシステムを駆使し、患者と妻にとって“最適な精子”をセレクトする点にある。


データの項目には血液型、民族、出生地、身長、体重、体型、皮膚の色、毛髪の太さや色彩、顔の形、鼻梁、一重および二重のまぶた、虹彩の色、唇の厚さや色彩などの特徴が含まれる。


このAIマッチングシステムを利用することによって、夫の精子による妊娠を諦めなくてはならない夫婦が、夫の特徴に「最も類似した」精子から健康な赤ちゃんをもうけることができる。最適な精子の抽出率は96%に達するという。


関係者は秘密保持契約(NDA)を締結し、精子データの送受もファイアウォールやセキュアインターネットゲートウェイなど厳格な情報セキュリティを介し、治療の機密を保持できるとしている。


精子バンクではこれまで、患者は紙の問診票に必要事項を記入し、検査員が手作業でひとつずつ精子をスクリーニングするため、効率が悪く非常に時間がかかり、検査員の負荷も大きかった。


AIマッチングシステムによってこれらの人的負担やコストが大きく削減できる見通しだ。


広義の「命の選別」に当たるのか?

「広東省無精子症診療センター」の設立は中国の生殖学界でも「不妊に悩む夫婦が最適な赤ちゃんをもうけられるだけでなく、人民が優生学的にすぐれた第2子、第3子をもうけるのにも役立つ」と歓迎されている。


中国は、建国初期30年の「産めよ、増やせよ」から約40年に及ぶ産児制限の国策「一人っ子政策」を経て「優秀な子を創出」する時代に入ったのかもしれない。


もっとも一部の識者からは、意図的に遺伝子情報を照合して精子を選別、抽出する行為は、「広義での命の選別」につながると危惧する声もある。


とはいえ、財力のある中国人が海外の精子バンクで、希望の外見や体力、知性を持つドナーの精子を買う行為も徐々に浸透しつつあり、そもそも精子バンクで精子を選んで子供をつくるということ自体が「デザイナーベイビー」とも言える。


中国社会では一般に、健康な子供が生まれるよう健康な精子や卵子を選ぶのは親になる人民の自己管理の範疇とみなされ、妊娠後の出生前診断による男女産み分けでさえ問題視されない。


富裕層が優秀なドナーの精子を選び優秀な人民をもうければ社会の利益につながると期待する声すらある。


中国社会では今後、「出生前から選ばれた優秀な人民」と「普通の人民」との遺伝子格差が生まれてしまうのだろうか。


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