ウェブ百科事典「ウィキペディア」はなぜこれほど世界で評価されているのか【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.50】

2021年1月15日、オンライン百科事典「ウィキペディア」は設立20周年を迎えた。「誰でも編集可能なフリー百科事典」としてスタートしたウィキペディアは、世界最大にして、世界でもっとも読まれている百科事典として記念すべき日を祝ったのである。


ウィキペディアに掲載された記事の総数は世界数百言語で5500万を超え、しかも記事を書いたり編集したりしているのはすべてボランティアのアマチュアだ。ウィキペディアの英語版だけでも収録記事総数は約620万件あり、印刷して製本すれば約2800巻にもおよぶ。

今日の野心的なIT大手は、投資家から募った莫大な資金をスタートアップを買収するべく注ぎ込んで「規模拡大路線」に走っている。対するウィキペディアの成長は生物的だ。ごく普通のユーザーが事典編纂の輪に次々と加わって、大きくなっていった。

権威に欠けるがWHOも頼る存在に

ウィキペディアは、20世紀末のインターネットに特徴的なテクノユートピア的思想にルーツを持つ。専門家ではないアマチュアでも、編集可能な百科事典を作る。この発想は長い間、他のユートピアン的思想と同様、たわいないジョークくらいにしか思われなかった。

ウィキペディアの信頼性を裏付ける学術的研究がいくつも発表されている現在でさえ、専門家が対価を得て執筆した『ブリタニカ』のような旧来の百科事典に備わっている真摯さや権威に欠けている。


そのため、学校や大学、そして本誌のファクトチェック担当者までも、ウィキペディアを情報源として頼ることに怪訝な顔を向けるのだ。

しかし理屈ではなく現実世界において、ウィキペディアは成功している。ソーシャルメディアが「フェイクニュース」やニセ情報、陰謀論の巣窟だと非難されて検閲対象にされているのを尻目に、ウィキペディアの評価はかつてないほど高まっている。

世界保健機関(WHO)は2020年10月、ウィキペディアと連携して、新型コロナウイルス感染症関連情報を同サイト上で提供した。WHOによれば、新型コロナに関する誤った情報が拡散する「インフォデミック」を防ぐには、ウィキペディアとの連携が不可欠と考えたからだという。

概算でアメリカだけでも年間4兆円超の価値

ウィキペディアの研究で知られるシェーン・グリーンスタインは、「ウィキペディアは、私が“デジタル・ダークマター”と呼ぶものの一例」と語った。


ダークマターとは目に見えない暗黒物質のことだが、ウィキペディアの場合もこれと似ている。いくらウィキペディアに記事を投稿しても、それは子育てや家事と同じく無報酬の仕事であり、そのため、標準的な経済計測ツールではその対価がほとんど可視化できないのだ。

それでも、ウィキペディアの価値の試算に挑んだ研究は少数ながらある。2018年に行われた研究では、アメリカの消費者はウィキペディアに年間約150ドル(約1万6400円)の価値を見出していると算出していた。


もしこれが本当なら、ウィキペディアはアメリカだけで年間約420億ドル(約4兆6000億円)の価値があることになる。

グーグルは、事実問題にまつわる検索によく表示される「ファクトボックス」に、ウィキペディアの記事を引用している。フェイスブックも同様のサービスの実装を始めているという。

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