20世紀アメリカで傑出した作家のうち、71%がアルコールと切っても切れない関係にあった。その数字は、一般の過剰飲酒者の割合(8%)の9倍にのぼる。
米メディア「スレート」は、著名な寄稿家の著者クリストファー・ヒッチェンズの死を受けて、このデータを公表した。ヒッチェンズは無類の酒好きで、酒を飲むことを「インスピレーションをもたらし、人間関係を改善する手段」として擁護し続けた。
「一流アメリカ人作家の飲酒率71%」という割合は、同国のノーベル文学賞受賞者全7人中5人が飲んだくれであったという数字にも比例する。
スコット・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイ、テネシー・ウィリアムズ、ジョン・ベリーマン、ジョン・チーヴァー、そしてレイモンド・カーヴァーらも、大酒飲みだったことで知られる。
1日中酔っ払っていてもいいの?
アルコールとクリエイティビティの関係をめぐる議論は、はるかビールが生まれた時代(5000~6000年前)にまでさかのぼる。
そして、このたびアカデミー国際長編映画賞を受賞したトマス・ヴィンターベア監督の『アナザーラウンド』が、再びこのテーマに光を当てた。
物語は、ノルウェーの心理学者で知識人のフィン・スカルデルードによる仮説から始まる。それは「人間は生まれつき血中アルコール濃度が0.05%不足している」というものだ。
この不足を補うために、ワイン1〜2杯分相当のアルコールを摂取し、その状態を保たなければならない。『アナザーラウンド』の主な登場人物は、スカルデルードの説を実際に試してみることにする。論拠は充分にあった。歴史を通じて、数多の天才や秀才たちが、創作時にアルコールの力を借りてきたではないか。
「0.05%理論」のワナ
しかし酒がクリエイティブな活動を助けるという考え方は、最近では支持者よりも批判者を多く集めているようだ。
まず始めに「0.05%理論」の提唱者と思しきフィン・スカルデルードが、この映画の公開後に「自分はそんなことは言っていない」と明かしたのだ。
スカルデルードが明言しているのは、アルコールは私たちに「子供時代の誇大妄想」を取り戻してくれるということを意味していたのだ。
この説明は、ヘミングウェイの有名な言葉を思い起こさせる。
「酔っ払って書き、しらふで直せ」
アルコールはほどほどに
アメリカの作家レスリー・ジェイミソンは、近作『回復:酩酊とその余波』で、レイモンド・カーヴァー、ジーン・リース、そしてエイミー・ワインハウスらの崩壊した人生を取り上げ、アルコールとドラッグの創造的効果にまつわる神話の例を示している。
ジェイミソンは自らのアルコール体験に基づき、その心理的、環境的、遺伝的要因について語っている。これらは、多くのクリエイターのアルコール中毒に影響しているだけではない。物語的・芸術的創作活動において“うってつけの”要素にもなるのだ。
ジェイミソンとラングをはじめとする研究者たちは、少なからぬ一流作家が精神障害を患っており、それがクリエイティビティと飲酒傾向を増進させていたという見解で一致している。
だから「アルコールは創造の助けになるか」という問いには、明確な答えは出さないでおくべきだろう。量、タイミング、そしてとりわけ、その人の人格が関係してくる。
だがはっきりしているのは、酔っ払いが天才を生み出すことはないということだ。
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