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執筆者の写真Shunta Takahashi

従順な女になりたくなかったから…「男」になった現代アルバニアの女性たち【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.140】

アルバニア極北の山村に閉じ込められていた10代の頃、グスティナ・グリシャイは思い切った決断をした。彼女は残りの人生を男性として生きることにしたのだ。村は家父長制と伝統に縛られていた。


若くしての結婚は望まず、料理やアイロンがけなど「女性がするようなこと」自体が好きではなかった。そのため、「ブルネシャ(女男)」として知られる性別を変えるアルバニアの風習を選ぶことにした。彼女は男性のニックネームであるデュニを名乗るようになった。


変化する社会から消えゆく風習

デュニが40年近く前に選択した風習は、現在消滅しつつある。父権的な農村地域も含め、アルバニア社会も変化し、若い女性の選択肢も増えたのだ。


キリスト教を信仰する山間部の彼女の村にも通じる道路が建設され、北部の他地域とともに、閉塞的な孤立状態から近年解放されつつある。外部から人が訪れるようになり、自分の人生を生きたいと強く願う地元の女性たちに新たな道が開かれつつある。

宣誓した女性がその道を選んだ理由はさまざまだ。デュニのように、強制的な結婚から逃れるためという者も多く、農場経営などの伝統的な男性の役割を担うためだという者もいる。あるいは単に男性に近いと感じた者もいれば、同地域を疲弊させた「血の復讐」(誰か家族が殺されたら、加害者一族の男性全員を復讐として殺害する古くからの慣習)によって家庭内の男性が全員死んでしまったためという者もいる。


男性にしかない特権

デュニは、自分が男性だと宣言することで、従来のジェンダー規範を打ち破るのではなく、それに服従してきた。彼女はまた、アルバニアで広く考えられているように、トランスジェンダーや同性愛者に対して嫌悪感を示す。


彼女が住んでいたアルプスの村レプシュでは、男性は権力を持ち、尊敬されると常に信じられていた。だから女性がその特権を共有するための最良の方法は、男性に勝とうとするのではなく、男性に加わることなのだ。


一方、女性の低い地位は、女性を守ることにもなった。争い合う一族の男たちが復讐のために殺されるという、アルバニア北部の家族を何世紀も崩壊させつづけてきた戦いから、女性は免除されていた。

息子を皆殺しにされた親たちは、娘に男として振る舞うよう促すことが多かった。村の会合で一族を代表し、財産を管理する男が必要だったのだ。

処女を宣誓した女性は、完全な男性とはみなされず、「血の復讐」にはカウントされなかった。それゆえに、敵対する一族から標的にされずに済んだのだ。

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