「クレジットカードは現金の出費よりも苦痛が少ない」とよく言われるが、最新の研究によって、クレジットカードは「購入の欲求」そのものを作り出すほど脳に快感を与えていることが示唆された。
20年前、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のドレーゼン・プレレック教授は、人はクレジットカードで買い物をする際、現金で支払う場合より高い価格、ときに2倍の価格であっても、支払いをいとわないという研究を発表した。
当然、ここで1つの質問が浮かび上がる──それはなぜなのか。
長年に渡り、クレジットカードが購入意欲を高めることを証明する2つの学説が対立している。それは、クレジットカードが支払いの痛みを緩和するという説と、クレジットカードが消費意欲を上げるというものだ。
表裏一体に見えるこの2つの説だが、それぞれの論拠となるメカニズムは別物だ。
現金とキャッシュレスで支払い時の「脳」はどう変わる?
この違いを解明するため、プレレック教授は3人の仲間と共に研究を行った。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い、クレジットカードと現金で支払いをする際、脳の活動が異なるかどうかを調べた。そこで、クレジットカードを使うと買い物の快楽度が上がることを示す有力な証拠を発見した。
fMRI内に入った参加者に、各々が関心のある商品84点を“かなりの格安価格”で見せる。この内の半分は現金、残りはクレジットカードで購入可能で、参加者はカートに欲しいものを入れる。
このプロセスを通して、研究チームはfMRIを用いて脳の3つの領域の動きに着目した。2つは報酬と喜び、1つは否定的な感情(痛み、不快感、拒絶)を司る領域だ。
その結果、参加者がクレジットカードで支払うと、この脳の報酬系回路に反応があることがfMRIの画像で写し出されたのだ。この反応は、現金を使用したときにはなかった。
キャッシュレス決済に潜む隠れたリスク
この調査はクレジットカードが支払い時の苦痛を軽減する可能性を否定するものではなく、クレジットカードが神経学的な報酬感覚に影響を及ぼすことを立証したものだ。
調査内で販売された最高値の商品は20ドルに満たないため、より高価な買い物におけるクレジットカードの影響の有無などはわかっていない。
しかし、プレレックは、調査結果は興味深くそして更なる解明が必要な意味合いや疑問を提起したと述べた。クレジットカードはいまや消費者が商品を購入する際のデフォルトの支払い方法であり、米国では最も成長の早い決済方法でもある。
キャッシュレスへの移行は、一部の人にとって、危険な行動パターンを作り出すものかもしれない。
一度のスワイプで重要な決断をすることによって、私たちにとって大切な『葛藤』がなくなってしまったとすればそれはかなり重要なテーマではないだろうか?
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