あなたは犬と猫のどちらが好き? バニラとチョコレートは? 冬と夏は?
こうした単純な質問に対する回答には、私たちの人となりや好みについてちょっとした何かがにじみ出る。
だが、そうした質問には重要な側面もある。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのマーケティング学教授、ジョナ・バーガーが新たな研究論文「好みを聞かせて:自己表現を活用してささやかな社会貢献を促すには」でそれを解説している。
同論文は、企業が人間に備わる自己表現欲求を刺激し、消費者にもっとお金を使ってもらうにはどうすればいいかに着目している。バーガー教授と論文の共著者は、このアプローチを「好みの二者択一」方式と呼び、寄付行為を選択肢に落とし込んでいる。
この研究について、ジョナ・バーガー教授が米オンラインメディア「ナレッジ・アット・ウォートン」に語った。
私たちは誰しも自分を表現することが大好きです。乗る車や着る服、聞く音楽を通して四六時中、自分を表現しています。(共著者と私は)こうした傾向や自己表現欲求を活用し、社会貢献活動を促すことはできないかと考えました。
実験の1つは、まさにいまお話しした通りの環境、つまり地元のコーヒーショップで行いま
した。
店内では時間帯ごとにさまざまなチップの環境を設けました。あるときにはただ「チップ」と書かれた入れ物を1つ置きます。またあるときには、入れ物を1つだけにするか、2つから好きな方に投票する「二者択一」方式にするかを無作為に割り当てました。お客さんはチップを通して猫か犬かを選択できたわけです。
寄付に影響する要素を感じ取るため、実験は数日にわたって時間帯を操作して行い、マーケティングでよく使われるABテストのように、すべてのバランスを調整しました。
結果、チップ入れを2つ作り、それぞれに「猫」「犬」と貼るだけで、チップの支払い額は入れ物1つの場合に比べ2倍以上にのぼりました。
「好みの二者択一」は多種多様なコンテクストにおいて活用できます。人間の行動──この場合は寄付──を動機付けする手段として、自己表現の選択肢を与えるわけです。
私はすべての人にただ選択肢を与えるよう提案しているわけではありませんし、どんな選択肢でも有効と言うつもりもありません。選択肢は人々が自分の好みを表現する手段でなければなりません。
また、選択の対象は人々が関心を持っていて、好き嫌いを表明することが人となりの分析に役立つと感じられるものであるべきです。
大事なのはコンテクストを理解することです。訴求の対象が関心を持ち、自分を表現していると感じられる選択肢を選んでください。
ドイツの高級車BMWを運転するタイプの人なら、それがその人にとって望ましいアイデンティティである、ということは数多くの研究で明らかになっています。その人はBMWのためなら、同じアイデンティティを持たない人よりもお金を多く使うでしょう。私たちがアイデンティティを大事にしていること、アイデンティティが行動の動機になることははっきりしているのです。
最近ちょっと考えていることの1つは、意見を表明することではなく、質問を投げかけることの価値についてです。
私たちは誰かを説得したい場合、こうしてほしいと伝えることが行動を促す最善の方法と考えがちです。しかし、意見すれば反発を招くことも多いでしょう。
質問をすると面白いことがいくつも起こります。第一に、情報を収集することができます。質問をすればコミュニケーションの相手、説得しようとしている相手をよりよく理解できる。第二に、質問相手に一定の自由と自主性を与えます。お話ししたように、相手は自分自身を表現すること、関与することが可能になるのです。
部下が「素晴らしい会社です」と答えれば、あなたは「そうなるには何ができるだろう?」と質問を重ねます。部下は自分なりに考え、いくつか答えを出し、あなたはそれを採用します。そうすると部下はそのプロセスにより深く関与することになるのです。
質問をすることは、自分に役割があると相手に感じさせる素晴らしい手段になり得ると思っています。そうなれば相手がプロセスに関与し、望ましい成果の達成に寄与する可能性がはるかに高まるのです。
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