イエス・キリストが砂漠で40日間過ごしたとき、悪魔が石をパンに変えるよう彼を誘惑し、道を外させようとした。悪魔としては、その誘惑はちょっと物足りないと思う。午後3時、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠にある自分の洞窟で、38度の暑さのなか横たわっていると、私の食べ物をめぐる幻想は、フィッシュ・アンド・チップスやローストした肉へと辿り着く。
2020年の6月、私はティピー(北米先住民の獣皮製住居)に住むガースという名の男性を訪ね、彼の洞窟の一つに移住したいと申し出た。
「クモに対する恐怖を克服したいんです」
これは事実だった。私は2〜3年前、ピレネー山脈で2度の「ヴィジョン探求」をおこなった。先住民の習慣にインスピレーションを得て、4日4晩自然にどっぷり浸るというものだ。2度目の挑戦で、私は自分がクモをひどく恐れていることに気づいた。
シャーマンの考え方では、それは女性的な恐怖を意味している(闇、湿り気、隠されたもの)。私はふと、クモへの恐怖心は奇妙なものだと思った。どうして私たちは、たとえばうさぎのような動物を怖がったりはしないのだろう?
とにもかくにも、私には時間があった。それは2020年6月のことだった。イギリス国民の私は、ついにアメリカに住むためのビザを取得し、ロサンゼルスに拠点を置いた。
巨人ガースとの出会い
私は10年前の休暇中に、初めてガースの土地を見つけた。私はめくるめくパームスプリングス生活を長く送り過ぎていた。それで、40マイル(約64キロメートル)北に車を走らせ、「ハイデザート」と呼ばれる地域に向かった。私は地元の店主に「人里離れた経験」の心当たりがないか尋ねた。
近郊のランダーズには、航空整備士のジョージ・ヴァン・タッセルが「インテグラトロン」を建造した。これは白いドーム型の、音響的に完璧な、タイムマシーンになり得るという建造物だ。ヴァン・タッセル曰く、彼は1953年に金星から訪れたエイリアンから受け取った指示に従って、これを建てた。
640エーカー(約259ヘクタール)もある理想郷のドームで、ガース(77)は巨礫の一つと同じぐらい巨大に見える。彼は、モーセやオーソン・ウェルズ、ウォルトン家の祖父(※アメリカのテレビドラマ『わが家は11人』の登場人物ゼブロン・ウォルトン)、ジョリーグリーンジャイアント(※食品加工会社「ゼネラル・ミルズ」社のマスコット)、ルイ14世、そしてときには、『不思議の国のアリス』の癇癪持ちのハートの女王を想起させる。
1970年代末、ガースはローブを身にまとい、「精霊」の力が導いてくれると信じて、裸足でアメリカを歩いた。彼は小規模のキリスト教教団「キリスト・ファミリー」に所属していた。貨物列車に乗り、茂みで眠り、何人かのとても興味深い人々に出会った。だが、常に移動を余儀なくされた。
そういうわけで、1980年、彼の父親が14万ドル(当時のレートで約3346万円)で息子に土地を買ってやった。ラッキーなガース。そして私たちにとっても幸運なことに、ガースは気前の良い巨人で、必要としている人すべてにその庭を開放してくれているのだ。
過去41年間、ガースは自分の所有地でティピーのなかで暮らし、メッセージを発してきた。
「シンプルに生きろ。そのほうが人生はずっと楽になる」
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