アルゼンチンで牛肉価格の高騰が止まらず、5月19日、同国政府は国内の市場価格を調整するため、暫定的に牛肉の輸出を30日間停止することを決定した。牛肉が“主食”とも言えるアルゼンチンで、国民は災難に直面している。
牧畜大国であるアルゼンチンは「一人当たりの牛肉消費量」が世界で最も多い国だが、牛肉の「総消費量」の世界一は中国である。今回の高騰の原因の一つは中国の食生活の変化によって牛肉輸入の需要が業界の予測を大幅に超えたことにある。
中国メディア「新浪網」は、アルゼンチンメディア「ラ・ナシオン」を引用し、今回の輸出禁止令でアルゼンチン国内の牛肉産業に2億4000万ドルの経済損失をもたらすだろうと伝えている。
アルゼンチンから中国へ輸出される牛肉の量は急激に増加しており、2017年には9万6000トンだったが、わずか2年後の2019年には42万6000トンまで増えている。そして2020年は約50万トンにのぼっている。
また、中国市場でより大きなシェアを確保するために、アルゼンチンは2025年までに中国への牛肉輸出量を135万トンにまで増加させる目標を立てていた。
中国の食生活の変化と食品安全問題が引き起こした需要
アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は、「牛肉価格の高騰の理由は説明がつかないものではない」と語り、その主な原因が世界の4分の1の牛肉を消費している中国にあると指摘した。
中国が豚肉、牛肉、羊肉、家禽類などを輸入するのは、食習慣の変化によるものだけではなく、鳥インフルエンザや豚コレラなど食品安全に関する問題がたびたび発生したことも影響しているという。
近年、中国国内の畜産物在庫量は急激に減少しており、もともとヨーロッパに輸出されていた南米の肉製品が現在では主にアジア向けに転換されている。
2020年に中国は約212万トンの牛肉を世界から輸入。これは史上最大の輸入量となった。中国へ牛肉を輸出する国の数も拡大しており、たとえば2021年第1四半期にロシアから中国へ輸出された牛肉は前年比26倍と急激に増加している。
牛肉の国際価格も上昇の可能性
信じられないほどの中国のニーズの増加に伴って、アルゼンチンの肉類の輸出量は増加の一途をたどり、中国はその80%を占めていた。ところが、アルゼンチン現地の生産量自体には変化がないうえ、大豆の作付け面積の増加で牧場用地が減少している。そのため、アルゼンチン国内市場への供給が厳しくなっているのだ。
政府のとった措置で国内市場への供給バランスが調整された結果、国民の財布には有利に働くと見られるが、前出の経済学者ジャン-ポール・シミエルはこう予測する。
「国際価格の上では一種のインフレが発生すると考えられます。中国への最大の供給国が1ヵ月の間市場からいなくなるのですからね」
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