ロシア北部にあるカント記念バルト連邦大学で、バイオモルフィズム(生物形態主義)に基づいた水中用のロボット開発が進められている。
まもなく完成予定なのが「マグロロボット」だ。研究チームには生物学、数学、物理学、工学の専門家たちが参加している。
彼らが目指しているのは、マグロの動きを完全に再現するイミテーションを創り出し、それが自然で生きる本物のマグロと共に行動し、さらに群れをナビゲーションできるようにすることだ。
「我々がやらなければならないのはアルゴリズムを正確にコピーすることだけ。生きた有機体のデジタルツインを作り出すことです。でもソースコードを知らないと、完全なコピーを作ることはかなり骨が折れます」
「容易でない問題がまだいくつか残っています。我々のマグロは三次元の空間に“生息”することになりますよね。したがって今後は、モーター、アキュムレータ、マシンビジョン、聴音器などの選択と開発を行わないといけません」
彼はさらに、ロシアメディア「リア・ノーヴォスチ」に次のように語った。
「ロボットが自立した装置として機能できるよう人工知能のシステムを開発することが重要です。こうした“内臓”をぜんぶ、自然の魚群と合流できるように、完全に本物のマグロの姿に見える装置内にセットしなければいけないんです」
マグロロボットには独自に判断・決定のできる人工知能を搭載する必要がある。なぜなら、水中では信号が届かないため、GPS機能を用いて制御する、ということができないからだ。
そしてこのプロジェクトは完全に、かつ具体的な実践段階まで到達している。将来的にはこのロボットが海洋環境のモニタリング調査などにおいても人間を助けることだろう。深海の知られざる生き物を知る可能性を与えてくれるにちがいない。
マグロの次はウナギロボットも登場?
いったいなんのために、マグロ型のロボットが必要なのか。もちろん、このプロジェクトにはいくつかの目的がある。
研究所の発表によれば、第一に、世界の海域における生物資源を研究し、広い知識を得ることだ。第二に、魚の運動のメカニズムとエネルギー消費の最適化を、よりよく理解すること。第三に、海洋の環境モニタリングを実施する際に役立てること。その一方で、大きな事故が起きた場合には、当該海域の魚を避難させることもできるようになるのだという。
マグロロボットの開発はロシア科学基金の研究助成金を得ている。同研究所ではさらに、カマスロボットとウナギロボットの開発も計画しているという。
魚型の水中ロボットは日本でも福島第一原発などで用いられており、また、アメリカのマサチューセッツ工科大学が2018年にフィジー島で実験を行ったことも報じられた。
アメリカの魚型ロボットは、カメラを内蔵したものだ。人間が海中に潜ると魚たちの行動に変化が生じ、正確な調査ができないため、人間の代わりに潜水するものとして考案されたという。
各国が開発を進める魚型ロボットだが、ロシアのマグロロボットが実際に海に出ることになると、魚群のルートに変化が生じる可能性もある。漁業への影響も否めないのではないかという、一縷の不安も残るところだ
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