NBA八村塁の休養で浮き彫りになったメンタルヘルスに対する「日本社会の強い風当たり」【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.221】

八村塁が復帰した夜、しばらくチームを離れていたことについて、彼はほとんど何も語らなかった。


八村はもともと口数が多いタイプではない。常にプライベートな存在であり、5ヵ月の休養は、彼を取り巻く「沈黙」によって守られていた。


そして八村は記者会見をすることも、大坂なおみが全仏オープンを棄権したときのようにインスタグラムで発表することもなかった。チームメイトのカイル・クーズマだけが、八村の状況について「メンタルヘルス」という言葉を使った。

日本ではアスリートが声を上げるのが難しい

八村の場合、文化的な側面が影響しているのかもしれない。彼が置かれた状況は特殊だ。元ドラフト1巡目のNBA選手としての知名度が高い米国と、東京五輪の日本代表の旗手であり、カップヌードルの広告塔になるほど有名な日本との両方で、どう見られるかを考えなければならないのである。


米シラキュース大学のスポーツマネジメント教授リック・バートンは、「日本は米国とは違う。物事の捉え方、受け入れられ方、見方が違うのです」と、話す。

日本ではメンタルヘルスに対する風当たりが強く、とくにアスリートはストイックさを絵に描いたような存在だ。彼らがプライベートな問題について話すことはあまりなく、専門家によればメンタルヘルス関連のリソースが不足している。


スポンサーからすぐに電話がかかってくる

アスリートの休暇は、ビジネスの利益とも密接に関係している。八村はウィザーズに入団するやいなや、極めて高い市場価値を持つようになった。彼のスポンサーには、ナイキのジョーダン、NEC、日清食品、カシオなど数え切れないほどの企業がいる。前出のバートン教授は、アスリートをこう擁護する。


「休養すれば母国だけでなく、スポンサーやチームメイトを失望させるかもしれないというプレッシャーと不安はさらに大きくなります。すぐにみんなから『調子はどうだ? 復帰の準備はできているか』と、電話がかかってきますよ。


そんな環境で、アスリートは一体いつ『プレッシャーがあろうがメディアに取り上げられようが、いまの状況は自分にとってよくないので、しばらく休みます』と言う勇気を持てるでしょうか」

2021年に休養した大坂なおみは、八村の状況に最も近いかもしれない。ただ彼女は主に米国で育ったことに加え、SNSでファンに近況を報告したり、ネットフリックスのドキュメンタリーに出たりするなど、自身の苦悩をオープンにしている。


一方、八村は逆のアプローチを取り、チームもそれに従った。復帰時期は本人の判断だったが、コーチや代理人と足並みを揃えてスケジュールを組んでいた。八村の風邪により少しの遅れはあったものの、コーチもとくに驚くことはなかったという。


それよりも、「彼の準備が整ったら」ということがすべてだったのだ。

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