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中国の「飲み会」カルチャーに大ブーイング──飲酒強要を若者も政府も大批判【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.168】

中国では、アリババ・グループの女性従業員が、出張先で上司に過度な飲酒を強要され、性的暴行にあったと今年8月に告発し、大スキャンダルとなっていた。


英メディア「BBC」によると、アリババの事件では、上司の行動が防犯カメラに映っているにもかかわらず、会社も検察も適切な対応を取らなかった。女性は社内のチャットで告発。それがソーシャルメディアで拡散されて、批判が高まった。告発された上司は解雇され、上級管理職2名も事態への不適切な対応を理由に辞任している。

今回の事件をきっかけに、飲み会で従業員に飲酒を強要する「有害なカルチャー」や、それに伴う職場でのセクハラに対する批判が中国国内で高まっている。


中国では、ビジネス上の取引を得たり、上司からの評価を高めたりするためには、人間関係の構築が重要で、顧客や職場の同僚と飲食をする文化がある。しかし、そのような場ではアルコール度数の高いお酒でたくさん乾杯することもあり、立場の弱い若者ほど飲酒を強要されがちだという。


上下関係が厳しいので、部下は会食や飲酒の誘いを簡単には断れない。さらに顧客からの誘いは絶対だ。特に、女性はそのような場でセクハラを受けたり、危険に晒されることが少なくない。


一方、上司による飲酒の強要による、従業員の死亡事件などは以前から発生し、度々問題になっていた。それゆえに2016年、中国政府は公務員が公務中にアルコールに触れることを禁止し、会食や飲酒を取り締まるようになった。しかし、多くの企業からは飲酒を強要する悪習はなくならず、事件の発生も止まなかった。

高まる批判と急速に進む対応

米メディア「ブルームバーグ」によると、アリババの事件によって、多くの女性たちが声を上げはじめているという。特にITやハイテク企業における同様の性的暴行やセクハラの体験、性差別を訴えるようになり、一連の騒ぎは収まる気配がない。


その結果、飲み会を重視する企業文化の見直し、そこから発生するセクハラなどの防止を実現するよう、企業にかつてないほど圧力がかかっているという。中国では、インターネット上の人々の繋がりも強く、ソーシャルメディア上でひとたび激しい批判が起きれば、かなりの圧力になる。


なお、国営メディアもこのような悪習に対して強く批判し、国営通信の「中国新聞社」は8月の解説記事で、「酒席文化は職場のいじめの温床になっており、酒席では上層部が権力を使って他人をいじめ、違法な犯罪の悪質な事件も引き起こす」と記した。


このような批判に対し、テック系企業はいち早く動き、アリババ、微博(ウェイボー)を運営する新浪、動画を配信するIQiyiなどは、職場のイベントでの過度の飲酒やセクハラを抑制するためのより厳格な規則を導入した。


批判の的となったアリババでは、セクハラの問題を受け付けるホットラインや、今後の問題解決のためのハイレベルな委員会も設置し、人事部長も懲戒処分としている。


また、腐敗を監視する政府機関である中央規律検査委員会も、アリババが悪い労働文化を持っていると批判。この「醜悪な伝統」を終わらせるよう呼びかけ、中国企業への監視を強化してこの問題に対処するとオンラインでコメントしている。


現在、中国政府による企業取り締まりは強化されているが、政府によるこれらの発言を鑑みると、もしかすると中国から強制飲酒の文化がなくなる日は案外近いのかもしれない。

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