文章を書いていることを想像する。それだけで「手も声も使わずに自動でテキスト入力ができる」という、まるでサイエンス・フィクションを現実にするような「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」の開発が進んでいる。
スタンフォード大学の研究チームが総合学術雑誌「ネイチャー」に報告したところによると、彼らが行なった実験は、脳波をモニターされた被験者に、手書きで文章を書いているところを想像してもらい、検出された脳波や神経活動を、機械学習アルゴリズムを使ったAI(人工知能)で文字に変換し、自動でテキスト入力をするというもの。
「生成された文章の精度は約95%」と、非常に高く、「1分あたり約90文字の入力が可能」であると言う。
BCIは手書きに関連する脳活動のパターンを解読することによって、文字入力を行う。そのため、手書きとほぼ同じスピードでの入力が可能になる。
「10年ほど前までは、完全にSFの世界の話だと思われていたことが、フィクションではないことが証明されつつある」
しかし、今回の実験結果は、「コンピュータを人間の脳にリンクする取り組みの現段階において最も新しい進歩というに過ぎない」ともコメントしている。
実際、製品化させるためには、FDA(アメリカ食品医薬品局)などの承認が必要であり、そのためには疾患治療目的でのBCIの利用の長期的な安全性や信頼性を証明しなければならないと言う。
大学だけでなく民間企業も続々参入
この分野に関わる研究者の多くが最終的に目指すのは、コンピューターを人の脳に”直結”させ、人が脳内で考えていることをリアルタイムで文字に変換できる技術およびデバイスの開発だ。
大学だけでなく民間企業もこの分野に続々と乗り出している。
フェイスブックのエンジニアチームも2017年より、大学などと連携しながらこの分野の研究に着手しており、「最終的には、脳への埋め込みなしに、脳と直結するインターフェイスの実現を目指している」ことを公にしている。
仮にこの超能力のようなデバイスが実用化した場合、プライバシーは守られるのかが気になるが、それについては、「ユーザーが意識的に言語中枢に送った言葉だけを解読するため、人の思考の自由を妨げることはない。このインターフェイスが読み取れるのは、ユーザーが文字にすることを望んだ言葉だけだ」と語っている。
ちなみに解読のスピードは、1分間に100文字程度になると言われており、音声から文字をうち起こすよりも速度は約5倍も速いそうだ。
現状、BCIの実用化は、まずは疾患治療や病状管理のためのものとして承認されることが重要であり、それが実現した後に健康な人への使用の可能性が広がるとの見方が強い。
疾患治療に続く応用方法としては、空間を共有していない相手とのタイピングも音声入力も必要としないより高速なコミュニケーションや、会話や筆記に頼らずに離れた場所にいる人とアイデアを共有できる「脳間通信」、また、脳の認知力や記憶力の向上・改善などがあるようだ。
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