看護師になる男性が「過去最多」 “女性の仕事” というステレオタイプ消滅の日も近い?【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.151】
最近の統計によると、看護師を目指す男性の数がアメリカ史上、過去最多となっている。
パンデミックをきっかけに、看護の仕事を去った人も少なくないが、新たに目指す人も増えているようだ。なかでも「男性の増加が顕著だ」と、米メディア「CBS8」は報じている。
同メディアの拠点であるカリフォルニア州のサンディエゴの看護学校「ハーン・スクール」では、「過去3年間で、男性の登録数が11%から36%に増えた」。同校の学長によれば、これは前例のない飛躍だという。
アメリカでの看護資格を持った男性の数は、1970年代はわずか2.7%だった。90年代でも6.2%だったが、現在はその約2倍の12%まで伸びている。
この増加傾向について、米誌「アトランティック」は2017年にこう報じている。
もともと製造業などに従事していたブルーワーカーたちが、失業後にヘルスケア分野に流入してきている、と。
元ブルーワーカーには、早急な転職先としてウォルマートのようなリテール/サービス業への転職というオプションもある。しかし、それらは一般的に低賃金である。それなら同じ低めの賃金でも「また失業する可能性の低い、ヘルスケアの方がいい」との思いがあると、同誌は分析する。
そのため、必要な知識をつけるために「看護学校に通う」選択をしているのだという。
実際、製造業などのブルーワーカーのニーズは減少の一途だが、医療や社会扶助の分野の求人は2000年以降、38%増だ。特に、医療や介護は今後も高齢者の増加により、さらにニーズが高まっていくことが予想されている。
看護・介護をされる側にもある偏見
ただ、「ナースは女性の仕事」というステレオタイプは依然根強い。
このステレオタイプを理由に、躊躇する男性は少なくない。他の職業と比べても明らかにニーズが増えているにもかかわらず、だ。
「男性だと、虐待や性的に搾取される可能性もあるのではと心配している」のだそうだ。
だが、男性を派遣したところで、クライアントから苦情がきたことはないという。「女性ナースに変えて欲しいと言われたこともない」
精神科医のジェニファー・ボッソンもまた、「女性の方が介護や看護の仕事に向いている」というステレオタイプは「覆せる」と、米メディア「NPR」の番組内で語っている。
なぜなら、介護や看護の仕事は「危険を孕み、肉体労働だから」。
その意味では「“男らしい”仕事であり、男性向きの仕事だということも充分できる」
心臓外科で10年以上、看護師として働いている男性ナースのロバート・ヴォーンは「患者が男性ナースは嫌だというなら仕方がないと思う。しかし、男性だというだけで拒絶されるのは、やるせない。そもそも、男性のドクターに身体を触られ、診断されるのには抵抗を示さないのに、男性ナースは嫌だというのは矛盾している」
ステレオタイプはゆっくりながらも確実に、書き換えられていくだろうと、同メディアは書いている。
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