パランティアが自分たちの技術を米軍に売り込むようになったのは2000年代後半だった。
米国の陸軍の部隊には、すでに別の戦場情報のプラットフォームが導入されていたが、それは戦場で部隊を守る役目をあまり果たしていなかった。そこでパランティアはイラクやアフガニスタンに駐留する大隊に直接、ソフトウェアを提供し始めた。2011年末の時点で、米軍の約30隊がパランティアを使っていたという。
2012年、米国の陸軍はパランティアのソフトウェアに関する評価報告書の作成を委託した。後にパランティアが訴訟時に提出したこの報告書の草稿には、軍に務める人の96%がパランティアを効果的だとみなしていたという。
トランプが大統領選で勝利したことで、パランティアは突如として、米国の連邦政府内に豊かな人脈を持つ企業となった。ティールはトランプ支持を表明していた有名人の一人であり、パランティアのファンだった陸軍の上級幹部たちも、トランプ政権で要職を占めることになったからだ。トランプ政権の誕生は、思いがけない大当たりだったのだ。
トランプ政権発足後、パランティアは数十億ドル相当の米軍との契約を勝ちとった。そこには既存の戦場情報システムの代わりとなる新システムを構築する8億ドルの契約も含まれていた。軍とは関係のない政府機関、たとえば内国歳入庁(IRS)、米国証券取引委員会(SEC)、米国疾病対策センター(CDC)とも契約も結んだ。
いつのまにかパランティアの事業の半分ほどが米国政府相手のものになっていた。
パランティアの微妙な立場
パランティアが顧客を獲得するのは危機のときに多い。
フランスの諜報機関と仕事をするようになったのはパリでのテロ事件がきっかけだった。移民・税関捜査局との関係も同じだった。同局は職員の一人がメキシコの麻薬カルテルに殺害されたのがきっかけでパランティアに助けを求めたのだ。
パランティアのエンジニアたちは11時間で関連するデータをすべて統合し、2週間後にはその職員を殺害した集団が特定され、逮捕されることになった。パランティアが移民・税関捜査局との契約を結ぶことになったのは、それからしばらくしてのことだった。
ゴンサレスによれば、移民・税関捜査局はパランティアのソフトウェアを「任務遂行に欠かせない」と評価していることからも、移民・税関捜査局にとってパランティアが重要であるのは明らかなのだという。
ゴンサレスは、近年、移民・税関捜査局による不法移民の摘発が前よりも的の絞られたものになっていることを指摘する。まるで誰を探していて、その人がどこにいるのかを事前に知っているかのような摘発がおこなわれており、そこが昔とは異なるのだという。
そんなことができるとしたら、移民・税関捜査局が大量の個人情報にアクセスできるようになったほか、以前よりも精緻な摘発を実行するためのデータ分析能力も手に入れたからだと考えるしかない。
2019年、ミヘンテなどの団体が、パランティアのニューヨーク支社とパロアルト支社、それからパロアルトにあるカープの自宅前で抗議活動をした。
米国各地の大学でも学生団体がパランティアに抗議の声をあげるようになった。パランティアは長年、カリフォルニア大学バークレー校で、プライバシー関連法のカンファレンスのスポンサーを務めてきた。
だが、カンファレンスの参加者が主催者にパランティアとの関係を打ち切るように圧力をかけ、パランティアはスポンサーから外されることになったのだ。パランティア社内でも抗議の声があがった。
200名を超す従業員が連名でカープに書簡を送り、移民・税関捜査局との仕事に対する懸念
を伝えたのだ。ティールの政治活動は、火に油を注ぐ結果を招いた。
イベント参加はこちらから。 ↓ https://peatix.com/group/7228383
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