ロシアの生理学者イワン・パブロフによる実験は、誰もが知っている。パブロフは犬にえさをやり、唾液分泌量を測定した。
これを何度もくり返すと、えさが運ばれてくる音だけで犬が唾液を分泌するようになる様子が確認された。ベルが鳴った後にえさが運ばれてこなくても、犬の唾液は分泌されるようになるのだ。
そのおよそ100年後、カナダの科学者ハーベイ・ヴァインガルデンが同様の実験に臨んだ。
ヴァインガルデンは実験を進展させ、マウスが空腹ではないときにえさを与えてみたところ、ベルが鳴ることで直前まではえさに興味を示さなかったマウスがえさをたいらげたことを確認した。
変わり続ける食環境に追いつけない脳
この実験結果は、私たちが満腹感を感じているにもかかわらず、食事に手を付けてしまうという制御不能な“本能的なズレ”を証明しているという。
「自然界では、脂質を含み炭水化物を含まない肉か、炭水化物を含むが脂質はほとんど含まない果物や野菜を摂るか、どちらかの選択しかありませんでした。つまり、人類誕生から加工食品が現れるまで、脳は糖質と脂質をそれぞれわけて対応していたのです」
仮説を裏返した驚愕の実験
スモールは同じ甘味を持つが、エネルギーレベルの違う2つの飲料に対する脳反応を比較したのだ。2つの飲料は人工甘味料で味を加え、1つにだけカロリーを加えた。結果は、仮説を裏付けるものであった。
「エネルギーを加えた飲料に対して、脳はより強い反応を見せました」とスモールは言う。エネルギーが多く作られるほど、脳はより満足するようである。
しかし、スモールは事がそこまで単純ではないことを後に学ぶ。
「私たちの仮説は、被験者が多くのカロリーを摂取するほど、脳内の報酬系が強く反応し、より多くのドーパミンが分泌されるというものでした」
甘さとカロリー値がつり合わないと脳が「混乱」する
こうした発見の数々によりスモールと彼女の同僚は「ダイエット飲料と炭水化物を一緒に摂取すると、健康に害を及ぼす」という結論を出し、それがアメリカで波紋を呼んだ。
「知覚経験がエネルギーと釣り合わないと、エネルギーの代謝に変化が生じます」とスモールは言う。
砂糖入りの飲料を飲むと、体はブドウ糖を分解してエネルギーに変換する必要があることを認識する。砂糖不使用で人工甘味料を使った飲料を飲むと、体は「エネルギーが含まれておらず分解するものはない」と認識する。
しかし、その2つを混ぜると(ダイエット飲料と同時に炭水化物を摂取する)、脳がどうしたらいいかわからないという信号を送ることになるのだ。
最終的に脳が戸惑い、脳の報酬系全体が害を受け混乱する。ときどきダイエットコーラを飲
みたくなることはあるだろう。それ自体は問題ではない。しかし、体のために、ポテトチップスを食べるまでは1時間空けることが大切だ。
彼女は肥満問題についてこう見解を示す。
「肥満の蔓延は意志や自制心の欠如に起因しているわけではなく、食事内容が根底から変わったこと、そして、私たちの周りにある加工食品の量が影響を与えているのです」
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