ジョージ・フロイド事件以来、アメリカでは「自分は『人種差別主義者ではない』というアピールが熱を帯びている」と、各紙が報じている。しかし、「ノン・レイシスト(人種差別主義者ではない)」は、「アンチ・レイシスト(反人種差別主義者)」とは違うと、人権活動家らは指摘する。
彼らによれば、この違いは「行動に出る」という。
人権活動家らが米メディア「CBS」に語ったところによれば、私はレイシストではない、差別なんてしていない、という主張は、そもそも「何の問題解決にもならないし、誰の助けにもならない」。
人種差別を断ち切るのに重要となる“最初のステップ”は、「差別的な視点や思考は誰の中にもあると認識すること」だと述べている。
一見、非差別主義的な人のなかにも偏見は存在し、そういった人たちによる偏見は、「彼らが無意識のときに現れる」。つまり、その種の無意識の偏見の存在は「当人にすら見えていない」。これも制度化された人種差別を永続させてしまっている大きな要因のひとつである。
だからこそ、誰もが侮蔑語の不使用や黒人の友人や同僚と交流していることを理由に「私はレイシストではない」などと断言すべきではない、と彼は言う。
「私はレイシストではない」という断言は、自分の言動や思考を問う機会を失いかねず、そこに危険は潜むと警告する。
「ノン・レイシストは、今こそアンチ・レイシストに変わるとき」
では、どんな人が「アンチ・レイシスト」なのか。
「差別的な視点や思考は誰の中にもある」ことを認識し、「自分の立場や地位を危うくしたり、友人や愛する人との対立といった犠牲を払ってでも、制度化された人種差別を断ち切るために行動する人」、それがアンチ・レイシストだと活動家らは言う。
そして、制度化された人種差別を断ち切るためには「アンチ・レイシスト」を増やすことが不可欠だと主張する。
メディア「NPR」の文化批評家エリック・デガンスは、「だからこそ、(俳優の)トム・ハンクスのような人々は、ノン・レイシストから今こそアンチ・レイシストに変わるとき」だと論じている。
そして、「ノン・レイシストの白人にとって、最も難しいのは、自分が白人優位の文化にどのように関わってきたかを自認すること」だと言う。その点で、ハンクスは「“正義の白人男性”を演じることでキャリアを築いた」人物であり、そのことを自認している。
ハンクスは寄稿文の中で、「史実に基づいたフィクション・エンターテイメント作品は、この国における人種差別の歴史をもっと描写しなければならない」と書いた。
ハンクスの寄稿文しかり、有名人が社会問題について言及することは、市井の人々がその問題について会話を持つきっかけになるとよく言われている。しかし、デガンスは、漠然と「改善の必要がある」と述べるよりも、自分がそれに直接的もしくは間接的にどう関わってきたかを内省し、それについて語ってはどうかと提案する。
「50〜60代以上のエンタメ業界関係者は、(白人をヒーローに見立てて崇拝する)英雄主義のアイデアを自分たちがどのように増幅してきたか、また、その恩恵にどれだけあやかってきたか」、そして、白人優位の価値観を築き、人々に刷り込んでしまった「責任について、さらには、築いてしまった不平等の文化を、今後具体的にどう解体していくかについて」を語ることで、人々の会話を促進すべきではないか、と。
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