世界規模で起きている半導体の不足は、日本や欧米諸国の自動車生産にブレーキをかけ、一部の企業を生産停止に追いやった。
多くの国では、政治家が半導体製造の国内回帰を声高に主張し始めている。こうした状況の中で、にわかに関心を集めているのが世界の半導体製造市場を制する台湾のTSMCだ。 中国企業はTSMCと同等の製造能力を手に入れたがっているが、今のところ成功していない。米国企業も苦戦している。インテルは、同社のドル箱であるプロセッサの製造の一部を台湾企業であるTSMCに委託する予定だ。
半導体製造工場の勝利
TSMCの成功をうらやむ政府は多いだろうが、同社と同等の製造能力を実現するためには桁外れの投資が必要になる。また、TSMCと取引関係にある企業は、この台湾企業が伝統的なサプライヤーとは違うことに気づきはじめている。
TSMCは長年、人目につかない存在だった。同社の製造する半導体はアップルやAMD、クアルコムといった大手ブランドの製品に組み込まれて販売されてきたからだ。しかし実際には、同社は世界の受託生産半導体チップ市場の半分以上を支配している。
さらに最新の半導体製造装置の価格が高騰し始めると、さらに多くのチップメーカーが製造を外部に委託するようになり、TSMCのライバルだった半導体専門工場の多くが競争から脱落していった。
ファブレス企業の拠り所として
TSMCは今年の設備投資額を250億~280億ドル(約3兆円)と見積もっている。この莫大な金額は2020年の実績より63%以上多く、インテルとサムスンの両方をしのぐ。アナリストによれば、この設備投資額の少なくとも一部はインテルからの注文に対応するためのものだという。
TSMCとインテルの内情に詳しい2人の人物によれば、インテルの社内にはTSMCと協働するチームがあり、TSMCの新工場にCPU製造を委託する準備を1年以上も前から進めているという。
バーンスタインの半導体業界アナリストであるマーク・リーは、インテルは2023年にはCPU製造の20%をTSMCに委託すると見る。この注文をさばくためだけでも、TSMCは製造設備の増強に約100億ドル(約1兆円)を投じなければならない。
このように半導体製造は桁外れの投資を必要とするため、半導体製造競争の最前線で戦い続けることはますます困難となっている。
インテルの例が示しているように、問題はコストだけではない。たとえばチップの集積度を高め、コスト効率とエネルギー効率を改善するためにはトランジスタの小型化が欠かせないが、その技術的難易度は非常に高い。
3nmノードにおけるトランジスタのサイズは、人間の髪の毛のわずか2万分の1だ。これを実現するための機械・化学面の調整ができる企業は、関連する製造技術に精通し、スケールメリットを実現でき、幅広いアプリケーションを開発しているTSMC以外には考えにくい。
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