グレーター・ビクトリア公立図書館本館の中庭のベンチで、デービッド・アーサー・ジョンストンが座ると、彼の持っていたコーヒーが見えた。それは持ち帰り用のカップに入っていた。これはいったい、どういうことなのだろう。
どこでそのコーヒーを手に入れたのか、ジョンストンに聞いてみた。
「『9-10クラブ』ですよ。平日の朝、ホームレスのために食べ物とコーヒーを出してくれるボランティア団体なんです」
経済的な問題は人をめちゃくちゃにし、ストレスで健康を害したり、離婚、ホームレス化など、さまざまな問題につながりうるというのは周知の事実だ。富裕層以外で、どうやってお金を増やすか頭を悩ませたことのない人などいるだろうか。
しかし、お金を増やす方法を絶えず考えるのではなく、どうすればお金が必要なくなるかを考えるとしたら、どうだろう? お金への依存を断ち切れるとしたら? 人生からお金という概念を完全になくしたら?
お金を「処分」する理由
ジョンストンが最後にした買い物──買ったのはビールとタバコとマリファナだった──は18年前、31歳の誕生日のことだった。それ以来、お金をまったく使っていないと彼は言う。それは嘘ではないと、彼の友人が教えてくれた。本当に一銭も使っていないのだと。
ジョンストンは、拾った小銭を側溝やゴミ箱に捨てたり、紙幣の記番号を切り取ったりもしている。2011年以前、紙幣がまだポリマーではなく紙でできていた頃は、もっと簡単に処分できたという。燃やせばよかったからだ。
彼にとってお金は、歩道に散乱した不快な写真や、木に刻まれた汚い言葉のようなもので、「子供たちに見せないようにするために処分する」とのことだ。
彼がこのように振る舞うのは、彼のお金に対する認識が、「お金を使わないことこそ唯一の道徳的な生き方である」という信念と表裏一体だからだ。ジョンストンは、自分がお金という「定められた条件」から抜け出せたことを幸運だと感じている。そして、自分のこうした生き方が、他人の手本となり、あとに続く人が出てきてほしいと考えている。
9年前、ギフトカードで買ったもの
図書館の外で少し話をした後、ジョンストンはセント・アンズ・アカデミーまで行ってみようと提案した。
ここはジョンストンが、何年にもわたって市と対決した記念すべき場所でもある。国の歴史的建造物であるこの場所で、断固として寝泊まりを続けたジョンストンは、もう数え切れな
いほど逮捕されたり拘留されたりした。
2004年に始まったジョンストンと市の対決は、憲法をめぐる闘争にジョンストンが身を投じるきっかけにもなった。その闘争は、家がない人々に対するビクトリア市の対応を根本的に変え、カナダのほかの都市にも影響を与えたのだった。
市内を歩いているとき、ジョンストンは31歳の誕生日の後にした、「議論の余地のある」消費行為について打ち明けてくれた。2012年に、人からもらったギフトカードでビッグマックとコーヒーを買ったが、それをカウントするなら、お金を使っていないのはわずか9年間だと。
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