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【ウクライナ危機】プーチン大統領は、アメリカの“弱み”を見透かしている【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.214】

2007年のミュンヘン安全保障会議。登壇したプーチン大統領の演説は世界を震撼させた。

ドイツのメルケル首相、アメリカのゲーツ国防長官、マケイン上院議員など世界の名だたるリーダーたちを前にプーチン大統領は西側諸国を激しい口調で非難した。


NATOは拡大しないという西側の高官の過去の発言を引用し「この約束はどこに行ったのだ」と語気を強めた。そして「最大の問題はアメリカが他国に介入しようとしていることだ」と名指しして非難を繰り返した。


10万人規模のロシア軍がウクライナの東側(ロシア)、南側(クリミア半島と黒海)、北側(ロシアとベラルーシ)の3方向から取り囲んでいる。プーチン大統領がどのような決断をするのか、世界が息をのんで見つめている。


ロシアの強硬姿勢に対してバイデン政権の対応は迷走している。12月8日、バイデン大統領は侵攻を阻止するためのアメリカ軍の派遣について「その選択肢はない」と軍事介入のカードを早々に放棄した。


足並みのそろわない米国と欧州

対応に批判が高まるなかでバイデン政権は24日、突然8500人の部隊を東欧へ増派する準備をしていることを明らかにした。派遣に備えてアメリカ国内に「待機」させており、最終的な決定はまだだとしている。


ロシアへのエネルギー依存の問題もある。EUは天然ガス輸入の41%、石油輸入の27%をロシアに依存していて(2019年)、ドイツに至っては天然ガス輸入の50~75%をロシア産が占める。さらにロシアからドイツへの2本目のパイプライン「ノルドストリーム2」が完成しており、これが稼働すれば供給能力は2倍になる。


「ノルドストリーム2」を巡っては、オバマ政権もトランプ政権も「ロシアにこれ以上エネルギーを依存すれば厳しい姿勢をとれなくなる」として計画中止を求め続けてきた。ロシアを恐れる東欧諸国からも懸念の声が上がっていた。なにしろドイツはEUの事実上の盟主で政策への影響力は圧倒的に大きい。しかしメルケル首相は自国経済を優先して計画を推し進めた。


今まさに懸念された通りの事態が起きている。そして銀行間の国際的な取引システム(SWIFT)からロシアを切り離すという特に大きなダメージを与える制裁についてはドイツが難色を示して合意できないままだ。プーチン大統領はそうした欧米の足元を見ている。


アメリカ側には「ロシアへの備えは自分たちにやらせてヨーロッパはロシアと関係を深めている。なぜアメリカだけが負担を負わなければいけないのか」という思いがある。それがトランプ政権でのヨーロッパとの軋轢となって噴出した。アメリカとヨーロッパの足並みの乱れはそうした構造的なものだ。プーチン大統領はそれを見透かしている。


事態は緊迫の度を深めている。しかし、ロシアの侵攻を何としても阻止するという強い意志は今のところ表れていない。

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