1495年以来、秋田県五城目町では朝市が開催されている。少し前のある秋の週末のこと。店は閉まり、人の往来も少ない通りで、きのこやくるみ、オクラや茄子、梨など、年配の売り子たちが季節の味覚を並べていた。
現在の五城目町の人口は1990年の半分で、その住民の半分以上が65歳以上だ。世界でもっとも高齢化の進む日本で、秋田県は特に高齢者が多い。五城目はそのなかでも、もっとも高齢化の進んだ町の一つだ。
しかし、五城目町の状況は決して異常ではなく、今後世界で起きることの前触れと呼ぶべきだろう。
国連によると、すべての国々で高齢者人口が増加している。世界の人口に占める65歳以上の高齢者の割合も増加し、2019年は11人に1人だったが、2050年までに6人に1人になるという。さらに、2050年までに中国をはじめとする55ヵ国で人口が減少すると国連は見積
もっている。
求められるのは、従来とまったく異なる考え方
人口の変化には、寿命の延長と出生率の低下という2つの要因がある。
ヘルスケアや住宅、交通などのインフラは、人口の平均年齢が今より若く、人口ピラミッドが正常だったころに整備された。現在それらを再設計する必要があるのだ。
似たように見える2つの町でも、それぞれ独自の歴史や文化、環境を持つ。同じような収入を持ち、同じ通りで暮らす同年齢の2人がいても、それぞれの心身の状態は異なるだろう。
「私たちは物事のコンテクストを見失いがちです」と、秋田国際教養大学の工藤尚悟は語る。
だからこそ国家としての政策設計が難しいのだ。年金をはじめとする財政を政府が担当する一方で、新しい人生の地図は何もないところから描き出すべきだ。
高齢とは「第二の人生」
また、問題となるのは高齢化を課題や重荷と見なす考え方だ。「高齢者は、社会から必要とされていないと感じています」と、NPO法人あきたパートナーシップ理事長の畠山順子(70)は嘆く。
長寿自体は問題視することではなく、祝福されるべきことだ。問題なのは長生きしても病気だったり、孤独だったり、自立できなかったりすることだ。
これは、高齢者たちが働き続けるということを意味する。65〜69歳の半数近く、そして70〜74歳の3分の1が仕事をしている。日本老年学会は、65〜74歳の人々を「準高齢者」と定義しなおすことを提唱してきた。
秋山は、「第二の人生のための職場」の必要性を呼びかけている。とはいえ、第二の人生での仕事は、かつての仕事とは異なり、その成果は、成長という基準では簡単に測れないかもしれない。
「経済的な生産性だけでなく、心身の健康も追求しなくてはいけません」と秋山は言う。定年退職者を農家にすべく訓練する自治体から、高齢者に起業を促す企業まで、数多くの試みがある。
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