中国発のスポーツブランドが、中国国内でナイキやアディダスをしのぐ勢いをみせていることが近年報じられてきた。
大きな転換点となったのは、2021年3月に大きな話題となった「新疆綿」問題だ。それまでナイキやアディダスは中国スポーツウェア市場の4割以上を占めていたが、この一件以降、急激に低迷している。
綿の生産地である新疆ウイグル自治区で人権侵害があるとして複数の海外ブランドが中国を非難したが、一方で中国国内ではその反発から「小売りナショナリズム」こと、消費者の間で海外ブランドをボイコットし、国内ブランドを支持しようという機運が高まった。
これにより、以前から国内に広がりつつあった、国産ブランドを再評価する「国潮」と呼ばれるトレンドも後押しされることとなった。
外国ブランドの売上高は、前述のように人権問題に口出しをした後、24%も減少し、いまも底をついていないと報じられている。そんななか、アンタとリーニンが、これまで中国国内でも圧倒的な人気を誇っていたアディダスやナイキを猛追している。
また、両社の株価は北京冬季オリンピックでも急上昇した。米メディア「ブルームバーグ」によれば、リーニンは6.8%、アンタは5.2%上がった。オリンピックは、これらの華流スポーツブランドの国際的な認知度の向上にも役立ったようだ。
ウイグル族の次は北朝鮮人の強制労働疑惑…
ただ、華流スポーツブランドがいくら勢いづいているといっても、ナイキやアディダスといった巨大グローバルブランドの存在感は中国市場でも今なお大きい。国外に目を向ければ、その差は歴然としている。
華流スポーツブランドの売上高の大半は中国内にとどまっている。たとえば、リーニンの収益の98.9%は中国市場で生み出されており、海外での売上高はわずか1.1%。この1.1%はアマゾンUSAとアマゾンJAPANを経由して販売されているものだと報じられている。
アメリカでは、2017年に施行された「敵対者に対する制裁措置法」において、北朝鮮、イラン、ロシアが生産に関与した商品の輸入禁止が規定されている。ただし、強制労働による生産でないことが証明できれば、輸入禁止は解除されることとなっている。
「ブルームバーグ」によれば、北朝鮮は外貨を得るために長年にわたり中国やロシアに出稼ぎ労働者を送ってきた。北朝鮮労働者の受け入れは明らかな制裁決議違反になるが、両政府の関与を疑う声もある。背景には外貨不足にあえぐ北朝鮮と、安価な労働力を求める中国やロシアのそれぞれの事情があるようだ。
一方、リーニンは今年1月の報告で、強制労働を含む違法行為に対して「ゼロ-トレランス」であり、「合法かつ倫理的な方法で事業を行うことを徹底している」と述べていた。
2月、中国市場に詳しい専門家ジェーソン・ユーは同メディアにこう語っている。
「中国企業は0から1、また10まで急上昇することはできても、10から100にたどり着くためのスタミナが不足していることがよくある」
中国のブランドの寿命は、最終的には品質を維持し、ブランドアイデンティティを作り上げ、トレンドを設定する能力によるとの見解をみせていたが、欧米進出をするにあたっては、「透明性の確立」も避けては通れないようだ。
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