ジョン・ラジャーウェイは、中国の宗教を専門とする世界屈指の研究者のひとりだ。2000〜2011年、フランスの高等研究実習院で教授を務めたのち、2020年まで香港中文大学で教鞭をとった。
現在、パリの利瑪竇学院(利瑪竇は、イエズス会宣教師マテオ・リッチの中国名)の学院長を務める。
専門は、道教の歴史と儀礼。研究チームの代表として40巻を超える中国語の民族誌の書籍や全8巻の中国宗教史叢書の編纂に携わった。
米国キリスト教改革派の出身
私はミシガン州グランドラピッズで育ちました。カルヴァン派のオランダ系住民、カトリックのポーランド系住民、それからユダヤ系住民などが、それぞれの地区で暮らしている都市でした。
科学を選ぶのか、それとも聖書を字義どおりに読むのか。そんな対立が私の宗派ではありました。
19歳のとき、家を離れてミシガン大学で英文学の勉強を始めましたが、中国への関心が芽生えたのはその頃でした。中国のことを勉強していると、世界がいままでとは異なって見える気がしたのです。
17世紀のイエズス会士らの中国観
1968年から1975年まで、ハーバード大学で中国古典文学を学びました。ただ、その頃に学んだ中国観は、旧態依然としたものでした。
その中国観は、17世紀から中国で積極的に宣教活動をしたイエズス会士たちのものからあまり変わっていなかったのです。
イエズス会士たちにとって、儒教は宗教ではなく哲学でした。外来の仏教はすっかり堕落した宗教であり、道教は迷信の寄せ集めとされていました。それでイエズス会士たちは、中国に土着の宗教はないという結論を出していたのです。
ところがフランスの高等研究実習院に行き、マックス・カルタンマルクやクリストファー・シッパーといった大先生方のもとで道教の研究をしてみると、自分の身に染みついた中国観がバイアスのかかったものだったと気づかされました。
実際の中国社会では宗教が根本的な役割を果たしてきたからです。
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