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執筆者の写真Shunta Takahashi

少子化まっしぐらの中国は「強制受精」を導入するのか?【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.189】

中国共産党が中国国民に対して「計画生育(一人っ子政策)」を強制したのは1979年のことだ。それは苛烈だった。避妊手術や中絶手術が強要され、許可なく複数の子供を持った親には重い罰金が科された。

地域によっては、家族計画担当官という名の事実上の秘密警察が、産児制限に従わない人を懲らしめるため、家を破壊したり、制限超過分の子供を連れ去ったりした。

中国政府の狼狽ぶりを示す出来事


ところが、そのすべては徒労だった。中国政府が反出生の恐怖政治を敷いても敷かなくても、長期の人口趨勢に大した違いは出なかったと思われるからだ。東アジアで一人っ子政策を実施したのは中国一国だけだったのに、東アジア地域全体で出生率が急落しているのだ。


一人っ子政策を終了したときも、中国の出生率は低いままだった。それも尋常でない低さだった。中国政府は近年、人口抑制政策を緩めただけではない。いまはむしろ子供の数を増やすことに取り組んでいる。2015年には二人っ子政策への転換があり、2021年の前半には三人っ子政策が導入された。

中国政府の狼狽ぶりをよく示す出来事が2021年9月末にあった。中国国務院が医療目的でない人工中絶を減らす新方針を公表したのだ。中国がいま人口動態上の大惨事に突き進んでおり、中国政府が必死にそれを回避しようとしている証だ。


どうして中国政府が不安になっているのがわかるのか。それは、政府が公表している数字が頓珍漢なものだからだ。共産主義体制の国では、隠蔽したいことがあると、往々にしてこういうことが起こる。収穫高が低かったり、生産量が足りなかったり、大量殺人があったりするときもそうだ。

中国の合計特殊出生率


世界銀行は、中国政府の統計にもとづいて中国の合計特殊出生率を1.7としている(合計特殊出生率は、ひとりの女性が一生のあいだに産む子供の数の平均)。


人口を安定して維持するには2が必要だ(厳密に言うと、子供が死亡することも加味して2

より少しだけ大きい数字が人口の置換には必要になる)。


つまり、合計特殊出生率が1.7とは、人口置換水準を下回っているということだ。

だが、ライマン・ストーンなどの人口統計学者は、中国の実際の出生率がそれよりもかなり低く、場合によっては1.1くらいの可能性もあると指摘している。これは重大な問題だ。人口統計の計算は非情なものだからだ。


どうして出生率の数字がそこまで重要なのか。それを知りたいなら、連続した三世代を考えてほしい。合計特殊出生率が置換水準を下回るとは、世代がひとつ下がるごとに、世代の人口がひとつ前の世代より少なくなるということだ。


合計特殊出生率が1.7の状況が続くのであれば、あなたの子供の世代は、あなたの世代の85%しかいなくなるということだ。孫の世代は、あなたの世代の72%しかいなくなる。これは人口の大減少だ。

だが、この程度なら対処可能だろう

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