アクアブルーと強烈なライム色、そして葡萄のような深い紫。これらは「アディダス」「リーボック」「ニューバランス」の新しい配色であり、こうした色の不調和は意図的に生み出されたものだ。
スニーカー・カルチャーの時代において、一番人気かつレアで、誰もが欲しいと思う一足を生み出す競争は、かつてないほど苛烈を極めている。
そうしたなか、行き交う人々の流れを止めるのは、さまざまな色が強烈に衝突しているスニーカーだ。その結果、メーカーは昔からある技法、つまり色彩理論をますます巧みに駆使するようになっている。
色で消費者の感情を揺さぶる
色と感情の関連性は、カール・ユングによる色彩を使った人格特性の分類から、飴の色が味の感じ方にどう影響するかを評価するフォーカスグループにいたるまで、何世紀にもわたって研究されてきた。
スニーカーブランドには、犯罪現場のような刺激的なビジュアルを作り出すだけでなく、わずかな色の違いを操ることを専門とした部署がある。こうした部署の使命は、消費者に感情を呼び起こし、ビジネスを加速させることだ。
そのため、多くのブランドの主力製品は基本形にとどまっている。その一方で、絶えず人々の心を揺さぶり興奮状態を促進するのが、欲望を生む潜在意識に働きかけてくる限定版コレクションだ。
1000エピソード鑑賞して研究
何度も見せることはカラー・ゲームに勝つ手段だ。ボルトカラーを見ると後退りしてしまうかもしれないが、必ず「ナイキ」が頭に浮かぶ。
これはブランドマーケティングの見本ともいえる。ナイキの副社長でクリエイティブディレクターのマーサ・ムーアはこう説明する。
そして、私たちが生活の大部分をオンラインで過ごすようになって1年がたった今、ピクセルの配色はこれまでになく重要となった。
プーマのグローバル・クリエイティブ・ディレクター、ハイコ・デセンスによれば、微調整したパステルカラーや強烈な黄色には、とくに肯定的な反応が寄せられているという。
夜8時のインスタ映え
だが明らかなものを除けば、我々と色の関係は複雑で個人的なものだ。慎重に選ばれ組み合わされたこうしたスニーカーの色やデザインを、面白い、めちゃくちゃだ、あるいは単にかわいいと思う人もいれば、どこか詩的で、深遠なものと感じる人もいる。そこが色彩理論の奥深いところだ。
ナイキのムーアは、色を決めるときに制作するムードボードには、映画が大きな影響を与えているという。
それから、プーマのミラージュテックは、DJが使うハードウェアのデジタルディスプレイを思わせるように、意図的にさまざまな時代の色をぶつけあっている。
だから何を履くかということを考えるとき、色彩理論はこれまでになく重要になるのだ。
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