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氷風呂にタッピング療法…「疑似科学」だらけの“悪徳ウェルネス”にご用心【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.177】

私のウェルネスの世界への旅は、多くの人と同じように“正真正銘”の健康問題に端を発している。筋痛性脳脊髄炎の症状に2度悩まされ、現在は新型コロナウイルス感染症の後遺症を抱えている。


私たちのほとんどは、従来の医師や精神科医の手にかかって旅を始めるが、前者で解決しない場合は、気づけばあっという間に「疑似科学」の世界へ深くはまり込んでいる。私は30年におよぶ旅の過程で、本物のヒーラー(治療者)に数多く出会った。がんを治せるという「レイキ(霊気療法)」の施術者たちにも相談した。


だが、トラウマは非常に危険な領域だ。ある親戚は、経験の浅い「新参」のPTSDセラピストに診てもらった後、2度も神経衰弱に陥った。私はロンドンのノッティングヒルで元ジャーナリストだという“先生”と夕食をとっていたときに、「半ダースの幻覚キノコと一緒にチリのジャングルへ足を踏み入れれば、あなたは治る」と言われたことがある。

もしも「あなたは正しい場所に来た」とか「あなたはもう安全だ」というフレーズを耳にしたら、全力で逃げてほしい。

「トントン」するだけでアルコール依存症を治療

かつて私は、ロンドンの名医街ハーレイ・ストリートの一室に1人の男性と座っていた。

リハビリやAA(アルコール依存症者の自助グループ)より効果は絶大だと彼が断言した驚くべき治療法とは、なんと「タッピング(トントンと軽く叩く療法)」だった。

私が食ってかかると、もはやおなじみともいうべきセリフが聞こえてきた──あなたは変化に「抵抗」しているのだと。


そうして私の非常に知的な友人は、宿泊客に何度も腸内洗浄を施すデトックス専門のリトリートを訪れた後、気が付けばスペインの病院で点滴につながれていた。

腸内洗浄を良しとする従来の医師に、私はまだお目にかかったことがない。「データで証明しろ」という話だ。

「氷風呂」ですべてが解決する

リトリートはかつて「ビルケンシュトック」のサンダルをいち早く取り入れるような人たちが訪れる場所だった。彼らにはヒッピー的な要素があり、トコジラミが潜む寝床を共にしたり、何日間もシャワーなしで済ませたりすることもしばしばだった。


だが、いまやウェルネスは私たちのセルフケア予算に組み込まれていて、業界規模は全世界で2兆8000億ポンド(約437兆円)相当に達するまでになった。いまではホテルにチェックインすれば必ず“ウェルネスなメニュー”が提示され、アメリカの高級施設にはウェルネス・コンシェルジュすらいる。


ロンドンでは最近、身体を震わせる動作を伴うTRE(緊張・トラウマ解放エクササイズ)のクラスが普及している。参加者は特定の体勢になるとけいれんのように震え出す。ストレスや不安で身体が固まっている人は、こうすることで心にトラウマを抱えていること、それゆえもっと「癒し」が必要であることを自覚するようになるという。

私には、「自分の身体を点検」できるからとヨガのリトリートを渡り歩く男友達が数人いる。独身の友達の何人かは、年に最高で3つのウェルネス施設(注射1回で約80万円)を訪れる。ほかにどこならクリスマスや新年にひとりでいられるのかと問いたくなる。

イベント参加はこちらから。


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