いのちを救った“転職”──「燃え尽き症候群」を克服した人たちのライフ・シフト【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.172】

職場でのストレスを抱えていたスペンサー・カーターは、3ヵ月にわたり休職していた。しかし休職中にも早く復帰するよう上司から連絡があり、カーターが担当していたチームは2倍に拡大され、それに伴って彼の責任も倍増した。


「最後の2年間は、すべてが悪い方向へ向かっていきました」と、カーターは控えめに振り返る。事実、このままではストレスによる極度の高血圧で死んでしまうとかかりつけ医から忠告されていた。彼は「自分の命を守るべく、自ら退職した」のである。


休職する直前にカウンセリングを受けてもいたが、国際企業の業務部長として多忙を極める彼の助けにはならなかった。データ処理に終わりは見えず、世界各国の時差をまたいでチームを運営し、厳しい競争社会で巨額の予算に責任を負う……。そんな日々だった。


カーターは、数十年かけて積み上げてきたエリートとしてのキャリアを捨てることに悩んだが、ついにこう考えるようになった。

「僕は自分に何という仕打ちをしているんだ?」


燃え尽き症候群「3つのタイプ」


WHOと国際労働機関による最近の研究では、少なくとも週55時間の労働が数十万件の“早死に”につながっていること、脳卒中と心臓病のリスク増加に関係していることが明らかになった。長時間労働は「深刻な健康被害」だという。


過酷でストレスフルな環境があらゆる不調を引き起こす──これが燃え尽き症候群だ。疲労、筋肉痛、頭痛、胃の不調に加え、無気力や倦怠感といった精神的な不調も現れる。多くの調査で、この1年間で燃え尽き症候群の労働者が増加していることが明らかになっている。


「解消できないストレスが蓄積した結果が燃え尽き症候群です」と、臨床心理士のロバータ・バブ博士は説明する。バブ博士によると、一般的に燃え尽き症候群には3つのタイプがある。


まず、激務と心労のために燃え尽きる「熱狂型」。そして「自分には挑戦も労働も足りないといつも感じている」ことで燃え尽きてしまう「挑戦不足型」がある。

そして最後に、「消耗型」だ。これは単に疲れ果ててしまった状態を指す。このタイプの人はエネルギーが低下し、心身の疲労はもちろん、社会生活においても疲弊しきっているという。

年収が「5分の1」以下になっても幸せ

燃え尽き症候群を経験した後でも、上司のサポートのおかげで職場復帰する人も多い。だが、カーターにとって職場復帰という選択肢はなかった。幸運にも充分な解雇手当を受け取ることのできたカーターは、自身の情熱を考古学にそそぐようになり、学位取得のため研究に乗り出した。


彼は、年収10万ポンド(約1500万円)の地位から初任給1万9000ポンドの部署へと移籍したが、この決断に満足している。


こうして転職したのは2011年のことだが、カーターは回復までの道のりは順風満帆ではなかったと明かす。


「第二の燃え尽き症候群が来てしまいました。PTSDとでも言うのか、すべてが自分を攻撃

してくるんです。それまでの数年間、あんなに幸せだったことは関係なくね」


第二の燃え尽き症候群と、パンデミックによる仕事や健康への影響があってもなお、カーターは専攻分野を極め、複数の論文を発表して転職に成功した。


「転職が命を救ってくれたと、つくづく思います」と彼は振り返る。

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