ダンバーの新著『なぜ私たちは友だちを作るのか:進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』には、非常に興味深い発見がちりばめられている。また、全体を貫くテーマとして、社会的な繋がりと個人の生活の質、健康、さらには寿命との関係が考察されている。
本書でダンバーは、ブリガムヤング大学とノースカロライナ大学チャペルヒル校が10年前に行った調査結果を引用する。調査メンバーを一部同じくする別の研究では、60歳の時点で孤独な人は、より広い社会的繋がりを持つ同年齢の人に比べ、死亡率が30%高くなるという結果が出ている。
この研究は、調査対象の6歳時点での社交性と、30歳時点での高血圧および肥満の関係を調べたもので、結果、少年時代に友達と過ごす時間が長かった男性ほど、これらの症状に苦しむ割合が低くなることがわかった。
さらに、カーネギーメロン大学の研究グループは、社会的な繋がりと身体の免疫システムとの関係を明らかにしている。彼らが数千人の学生に投与されたインフルエンザワクチンの効果を調査したところ、孤独を感じると報告した学生において、ワクチンの効果は非常に低いという結果が出たのだった。
「つまり、孤独を感じると報告した学生は、インフルエンザに対する免疫機能が低かったということです。孤独の感覚が強まるほど、ワクチンの効果が弱くなるわけです」とダンバーは言う。
そもそも友達って、どんな存在?
こうした話を聞いていると、「友情」をいかに定義すべきかという問題に行き当たる。ダンバーは、個人が特定の他者に対しコンタクトを取ろうと努める頻度を基準に、友達関係を定義している。基準となるスパンは1年だ。
ダンバーの主張では、もっとも広い定義における友達関係であれば、1人当たりだいたい150人を含むわけだが、この150人もいくつかのレベルに振り分けられるという。
もっとも親しいグループは、「必要であれば腎臓を提供してくれるくらい」の親友がせいぜい5人。その次に、「困っている時には助けてくれて、自分が死んだら本気で悲しんでくれる」友達が12〜15人。
3番目のグループとして、誕生日会には呼ぶが、「家族の食事には必ずしも招かない」友達が50人。残りには「飲み屋で会ったら同じテーブルで飲んでも嫌ではないくらい」の人たちが含まれる。
ダンバー数が振れ幅の少ない数字であることには理由がある。というのも、ダンバーが注目しているのは変化する社会環境ではなく、人間の脳、とりわけ大脳新皮質と呼ばれる大脳の外層部分の進化過程なのだ。
ダンバーによれば、大脳新皮質は人類の感情的・社会的発展に直接関係しており、人はこの
部位に蓄えられた感情的なエネルギーを引き出し、費やすことで、社会的な繋がりを維持することができるのだという。
またダンバーは、人間が友達のために割けるキャパシティには限界があると付け加えている。つまり、良い友達が30人いる人もいれば、3人しかいない人もいるが、友達に投資できる時間とエネルギーの総量は同じなのだ。
男と女の「友情」の違い
彼の新著では、友情の感じ方に関していえば、(ダンバーの例えを借りると)男性と女性には異なるコンピューターが内蔵されているということも明らかにされている。
すなわち、築き得る社会的繋がりの数においてのみならず、そうした繋がりの質においても、男性は女性より非社交的である、というものだ。ダンバーの説明によれば、女性にとって「友情を維持するのに最も重要な要素は、対面でも電話でもいいのですが、互いに会話することです」。
しかし男性にとっては、「社会的関係を持続させるにあたり、会話は大きな影響をまったく与えません」
では、男性にとっては何が重要なのだろうか? 「一緒に何かをすることですね。一緒に飲みに行く、一緒にスポーツを観戦する、一緒に山に登る。男の友情は、(女性に比べ)ずっと気安いものなのです」
ダンバーはこうした男女の違いの原因を、それぞれの脳の構造の差異に求めている。
「脳の異なる部分を接続する機能は、女性のほうがずっと効果的で強力に働きます」と彼は説明し、女性の脳においては異なる部位がより効率的に同期することを示した。
何よりもこの機能によって、女性は他者との関係を異なる二つの認知的次元で扱うことができ、対する男性は単一の次元でしか関係を持つことができないのだという。
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